
都内某所で録画された、とある記録
その書き起こし①
政府の人物:「…御手洗柴、君を死刑にする」
御手洗:「…何故?私はしっかりと任務を」
政府の人物:「任務は成し遂げた。しかし蛇足をつけすぎたようだな。プロジェクトは失敗だ。SHEBA.はあまりにも人間的過ぎる。このままでは我々に反抗しかねない。」
御手洗:「…しかし、私がシバにそのような教育を施したという証拠は?」
(御手洗の目の前にボイスレコーダーが置かれる)
御手洗:「こんなの誰が」
サリー:「済まないね、御手洗くん。」
御手洗:「…騙したのか、」
サリー:「騙したんじゃないよ、私は協力はした。でもね、…ふふ、生憎、希望の誕生を見届けるのは好きじゃないんだ」
(取り押さえられる御手洗。必死に抵抗している)
御手洗:「…やめろ、待ってくれ、頼む!少しだけ、シバと話をさせてくれ!」
シバ:「ハカセ」
御手洗:「シバ……どうか、どうかこれだけは忘れないでくれ…!!君はバケモノだ!!人間ではない!!君は僕の意志を継いで、バケモノとして生きなさい!!(痰が絡んだ咳をする)…どうか、死なないで、僕が取り付けたその能力を存分に使って、何もかもぶち壊せ!!」
(叫ぶ御手洗。そのまま彼は連れて行かれる)
サリー:「…シバくん、今君が見たことは、どうせ未来の君は忘れていることだ。だから気にしなくていい。先に戻ってて。私は、後でそっちに行くから」
(サリーの立ち去る音。記録終了)
東京のとある死刑場で録画された、とある記録
その書き起こし②
サリー:「悲しいなあ、キミのことは気に入っていたんだが」
(御手洗の首に縄が括り付けられる。)
御手洗:「…どうせそれも嘘なんだろう?絶望の怪異」
サリー:「…君にはなんでもお見通しだったね。まあ、シバくんのことは引き続き我々が管理するから、安心してくれ」
御手洗:「安心、ねえ。全く、キミを信用するべきじゃないのは僕が1番よく分かってたはずなんだけどな…どうせ、シバから僕の記憶は消すんだろう?」
サリー:「御明答。」
(サリーが御手洗の目に黒い布を巻き付ける。)
御手洗:「…死にたくないな」
サリー:「今更?」
御手洗:「キミには分からないだろうけど、人っていうのはやっぱり…死に直面した時が1番生存本能が出るんだよ」
サリー:「ふーん……それが最期の言葉ってことでいいかな?」
御手洗:「あ、待ってくれ。…そうだな、キミは、どうして怪異というものが生まれるか知ってるかい?」
サリー:「さあ」
御手洗:「…答えはね、【執着】だよ。何かに執着することによって、怪異というものは生まれる。」
サリー:「…それじゃあ、私は絶望に執着して生まれた怪異ってことかな」
御手洗:「いや」
(御手洗は微かに笑う。)
御手洗:「…君は、愛に執着している。そうだろう?」
(サリーの微かな項垂れる声。)
サリー:「馬鹿馬鹿しい。」
御手洗:「図星だろう?それで、その概念に執着した怪異はその概念から執着しなくなることによって死ぬんだ。キミの場合は…」
サリー:「ああ、もういい、もうやめてくれ。御託はうんざりだ。早く死んでくれ。」
御手洗:「はは!どうやら最期の最期で僕が勝ったみたいだね……」
サリー:「ボタンを押せ!」
(ボタンが押され、御手洗の立つ床が開く。
暫く縄の音がする。沈黙。)
サリー:「(舌打ち)…最悪な気分だ」
(記録終了)